新型コロナウイルスで経営に困ったら
5分で分かる中小企業の支援策 資金繰りに困ったら
2020/4/15
中小企業の資金繰り支援には様々な制度がある
新型コロナウイルスの感染拡大と外出自粛の影響で、売り上げが減り資金繰りが苦しい中小企業が増えている。政府は中小企業向けの資金繰り支援制度を打ち出しているが、様々な種類があるため、どの制度を使えばいいのかわからない人もいるだろう。当面の資金繰り不安を解消するために、いまやるべきことのポイントをまとめた。
■飲食店(小規模事業者)の場合
Q. 都内の商店街で飲食店を営んでいます。外出自粛の影響を受けて売り上げが減りました。足元の資金繰りが不安なのですが、どこに相談に行けばいいのでしょうか
A.民間の金融機関だけでは十分な対応ができないため、政府は様々な支援策を用意している。まずは全国1050カ所にある「新型コロナウイルスに関する経営相談窓口」に行ってみよう。各都道府県にある日本政策金融公庫などの政府系金融機関や商工会議所、中小企業の関連団体に窓口があり、資金繰りに関する支援制度を案内してくれる。直近の経営状況を示す資金繰り表などの資料を持っていくと、相談の手間を減らせる。
Q. 3月の売上高が前年同月と比べて半減しました。どの支援制度が活用できますか
A.日本政策金融公庫の融資制度「新型コロナウイルス感染症特別貸付」は、最近1カ月の売上高が前年同期と比べて5%以上減少していれば利用できる。小規模事業者の場合は6000万円を上限に融資を受けられる。売上高が15%減少していれば利子補給の対象になるので、当初3年間は3000万円分が無利子になる。
飲食店なら、日本公庫の融資「衛生環境激変対策特別貸付」も利用できる。売上高10%以上の減少などが条件で、通常の融資に1000万円を加えたものが限度額となる。小規模事業者であれば、担保と保証人なしで利用できる「マル経融資」もある。
Q. いつも取引している地元の銀行があります。融資を受けられますか
A.7日に決定した緊急経済対策では、民間の金融機関でも都道府県の制度融資を活用し、3年間実質無利子で融資する。売上高が減り、信用保証を受けた事業者が対象だ。信用保証は中小企業が民間の金融機関から融資を受ける際に、信用保証協会が保証人となることで資金調達を支援する制度だ。
Q. 売り上げの回復が見込めないなか、融資を受けられるかどうか不安です
A.信用保証協会は中小企業が倒産して借金を返せなくなったら、肩代わりして金融機関に返済する。ただ返済が免除されるわけではなく、いずれ信用保証協会に返済する必要がある。信用保証協会の資金繰り支援制度「セーフティネット保証4号」は借入額の100%を保証する。
Q. どういう手続きが必要ですか。オンラインで手続きできないでしょうか
A.信用保証を申し込むには、まず事業者の本社所在地の市区町村への認定申請が必要だ。認定書を発行してもらったら、金融機関や信用保証協会に持参して申し込み、審査を受ける流れとなる。
新型コロナウイルス感染症特別貸付は小規模事業者の場合、インターネットで申し込みできるが、後日最寄りの支店に書類を郵送する必要がある。その後面談・審査があって許可がおりたら融資の手続きをして完了となる。
Q. 相談が殺到していて順番待ちと聞きました。その間に資金繰りは悪化します。どうしたらいいのでしょうか
A.中小企業からの資金繰り相談が殺到し、なかには相談までに1カ月待ちという人も出てきている。それまで待てない場合はオンラインの融資サービスがある。フリーは同社のクラウド会計ソフトを使う企業を対象に借入可能額や金利条件を人工知能(AI)が計算し、約1週間で提携先銀行が融資する。OLTA(オルタ、東京・港)はオンライン上で売掛債権を最短で即日現金化するファクタリングサービスを展開している。
中小企業の経営に詳しい堂野達之弁護士は「融資を受けるまでに時間がかかるのであれば、それまで会社から出ていくお金をできる限り抑えることが大事」と指摘する。7日に発表された緊急経済対策では、税金や社会保険料の支払いを原則1年間猶予する制度を設けることが決まった。堂野氏は「資金繰りに困っている場合は納付書が届いてもひとまず払うのをやめ、引き落としにしている場合は解約する方法もある」と話す。取引先への支払いがある場合は、事情を説明して融資が下りるまで待ってもらえないか早急に交渉する必要がある。従業員への給与支払いについては雇用調整助成金を活用するほか、「時短勤務にしてもらえるか交渉するなどしてできる限り固定費の支払いを当面抑えていく」(堂野氏)。
Q. 融資はいずれ返済が必要です。お金を返済しなくてすむ支援制度はないのでしょうか
A.7日に決定した緊急経済対策では、新たに中小企業やフリーランスを対象にした「持続化給付金」が創設された。売り上げが前年同月と比べて50%以上減った事業者に対し、法人には最大200万円、個人事業主には最大100万円を給付する。給付金の使い道は問わず、自由に使える。給付金の申請手続きには売り上げの減少を証明した書類などが必要になる。
申請はオンラインを中心にする方針で、支給開始は最短で5月中になりそうだ。いまやっておくとオススメなのは、昨年に比べて売上高がどの程度減少したかを証明する書類を用意することだ。確定申告の書類や月ごとの売り上げを示すものでもいい。
■大手メーカーの下請け中小企業の場合
Q. 大手自動車メーカーの下請けで部品加工をしています。工場の生産が停止した影響か、3月になって受注が減り、売上高が20%減っています。資金繰りが不安になってきました
A.商工組合中央金庫の融資制度「危機対応融資」は最近1カ月の売上高が前年同期比5%以上減少していれば利用できる。融資限度額は3億円でそのうち1億円を実質無利子で借りられる。
Q. 他の支援制度は併用できないのでしょうか
A.条件が合えば資金繰り支援制度を併用することは可能だ。日本公庫の新型コロナウイルス感染症特別貸付は中小企業の場合、最大3億円まで融資を受けられる。このうち無利子が1億円までなので、商工中金の危機対応融資と併用すれば合わせて2億円を無利子で借りられる。
Q. 手形決済を持っています。すぐに現金に換金しておいた方がいいのでしょうか
A.2011年の東日本大震災の時は決済できなくなった手形について、不渡り処分を猶予する措置が実施された。今回は現時点では同様の措置はまだ出ていない。経済環境が悪化している時は「手元に現金を置いておくのがよい」との見方があるが、売掛債権を現金化するファクタリングサービスの利用には注意が必要だ。
税理士・公認会計士の北條明宏氏は「ファクタリングは手数料を金利に直すと10%を超える場合もあり、最後の手段にすべきだ。また、ファクタリングを使っても、取引先がつぶれたらファクタリングで得たお金は返さないといけないため、リスクヘッジにもならない」と指摘する。現在は公的機関による低利の貸付が充実しているため、「売り上げが下がっていれば利用のハードルは低いので、こちらを優先した方がいい」(北條氏)。公的機関の貸し付けを利用した上でも厳しい場合は「90日や120日といった長期の債権を持っていれば(ファクタリングサービスの利用を)検討してもいい」(北條氏)という。